商社の責任は、商品を仕入れて販売し、契約どおりに引き渡せば終わるものではないと私は考えています。売り手と買い手の間に立ち、距離や情報の差、制度や商習慣の違いを埋めながら、取引が完了するまで双方をつなぎ続けることに、商社が存在する意味があります。
中古車輸出では、顧客が日本にある車両を直接確認することなく、写真や車両情報、そしてEVERYからの説明をもとに購入を決断することも少なくありません。EVERYが扱っているのは車両であると同時に、その判断を支える情報であり、取引の先にある顧客の事業でもあります。
【責任と過失は、必ずしも同じではない】
コロナショックの時期には、世界的な物流の混乱によって船積みの遅延が相次ぎました。EVERYが船を動かすことはできず、船会社や港湾関係者にも、それぞれ避けることのできない事情がありました。
しかし、誰の過失でもないからといって、顧客が受ける不利益までなくなるわけではありません。代金を支払った車両が予定どおりに届かないという事実は変わらず、その間、顧客は大きな不安を抱えることになります。
EVERYでは、把握している状況を説明し、新しい情報が入るたびに共有しながら、船会社や関係者との調整を続けました。顧客を安心させるためだけに不確かな見通しを伝えるのではなく、分かっていることと、まだ分からないことを明確に分けて伝えることを大切にしました。
商社としての責任とは、すべての問題について法的な責任を負うことでも、実現できない約束をすることでもありません。自社の過失ではないという理由で関係から退かず、顧客が困難の中にいる限り、説明と調整を続けることだと思います。
【情報を届けることも商社の仕事】
海外の顧客の中には、初めて日本から車両を輸入する方もいます。そのような顧客にとっては、どの車両を購入するかだけでなく、自国の輸入制度や年式規制、必要な検査、通関手続きなど、取引前に確認しなければならないことが数多くあります。
EVERYにとっては日常的な手続きであっても、初めて輸入する顧客にとっては、何から確認すればよいのかさえ分からない場合があります。その状態で車両だけを販売すれば、購入後に輸入できないことが判明したり、想定していなかった検査や手続きが必要になったりする可能性があります。
EVERYでは、把握している輸入制度や検査条件をできる限り分かりやすく伝え、現地で確認すべき事項も含めて案内してきました。最終的な輸入手続きは顧客側で行うとしても、販売する側が知っている重要な情報を提供せず、取引だけを進めることは誠実ではありません。
知識の差を利用して売るのではなく、その差を埋めることで、顧客が適切に判断できる状態をつくる。情報を届けることも、国境を越えて取引する商社の重要な仕事です。
【在庫を売るのではなく、必要な一台を考える】
顧客からトラックを探してほしいという依頼を受けたときも、単に在庫の中から販売しやすい一台を紹介すればよいわけではありません。何を運ぶのか、どのような道路や環境で使用するのか、必要な積載量や仕様、予算はどの程度かによって、適切な車両は変わります。
顧客のニーズを十分に理解しないまま提案すれば、車両自体に問題がなくても、実際の用途には合わないことがあります。それでは売買は成立しても、商社として良い仕事をしたとはいえません。
EVERYでは、顧客の話を聞き、条件を整理したうえで、その仕事に適したトラックを探して提案します。場合によっては、目の前にある在庫ではなく、別の車両を探した方が顧客にとって良いこともあります。
短期的に何を売るかではなく、その一台が顧客の国で長く働き、事業を支えられるかどうかを考える。その姿勢が、次の取引につながる信頼をつくるのだと思います。
【問題が起きたときに見える会社の姿勢】
20年にわたり海外取引を続ける中では、十分に確認し、準備を重ねていても、予期しない問題が起きることがあります。そこに明確な過失があるとは限らず、誰か一人を責めても解決しないことも少なくありません。
それでも、顧客にとって大きなマイナスが生じている以上、「EVERYの責任ではない」という説明だけで終わらせるべきではないと考えています。責任の所在を正確に見極めることは必要ですが、それと顧客への対応を止めることは別の問題です。
現在の状況を整理し、EVERYに何ができるのかを考え、関係者の間に立って解決の可能性を探し続ける。順調な取引の中では見えにくい会社の姿勢は、むしろ問題が起きたときの行動に表れます。
連絡を止めないこと。不都合な事実も正確に伝えること。簡単に解決できない状況であっても、顧客を置き去りにしないこと。信頼は、問題が起きなかった実績だけではなく、問題が起きた後の行動によっても築かれます。
【商品とともに、約束を預かる】
一台のトラックは、海外の顧客にとって単なる中古車ではありません。荷物を運び、収入を生み、家族や従業員の生活を支える仕事の道具です。バスは地域の人々を運び、トラクターは農作物を育て、日本で役目を終えた車両や機械が、次の国で新しい価値を生み出します。
商社は、自ら車両を製造するわけでも、船を運航するわけでもありません。それでも、異なる国にいる売り手と買い手の間に立ち、情報を届け、条件を整え、問題が起きれば調整を続けることができます。
商品を動かすだけではなく、その取引に込められた期待と約束を預かる。そして、誰の過失ともいえない困難な状況であっても、顧客を置き去りにしない。
それが、20年にわたり中古車輸出に携わる中で、私が考えてきた商社としての責任です。
株式会社EVERY TRADINGも、一件一件の取引の先にある仕事や暮らしを想像しながら、日本と世界の間に立ち続ける会社でありたいと思います。
株式会社EVERY TRADING
代表取締役 渡部雄一郎
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自動車輸出・貿易コンサルティング/株式会社エブリィ
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